結婚式スタイルの変遷から読み解く、時代の流れ 現代の「シェアド婚」って?
「結婚式」と聞くと、ウェディングドレスを着た新婦とタキシードの新郎がチャペルの前で愛誓い合う、洋風の挙式を思い浮かべる人がほとんどだと思います。
ですが実はこのキリスト教式の挙式スタイルが日本でメジャーになったのは、つい最近のこと。
1960年代の高度成長期に欧米から入ってきた文化なのです。日本ではそれまでは神前式や仏前式が主流でした。
それからというもの、すっかりこの洋風のウェディングが日本の文化に根付きましたが、結婚式はその後も時代時代で少しずつ変わっているのです。
結婚式は10年ごとにスタイルが変わっていく、と言われています。
国の体調に合わせてトレンドとなる挙式スタイルが時代ごとに作り出されているのです。
そんな結婚式のトレンドの変遷を時代の流れと共に一緒にみていきましょう!
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目次
バブル時代1980年代 ハデ婚
1980年代のバブル期の日本は経済的循環がとてもよく、みんながお金持ちになった時代でした。
バブル時代をあらわす結婚式は「ハデ婚」。
この時代はどんなに近距離でもタクシー代は一万円、とか高級車を買いまくった、船を買ったとか、バブル期のエピソードを聞きました。当時は国全体が半ば狂気じみていたような印象を持ちます。
「ハデ婚」と呼ばれるバブル期の結婚式は、とにかくハデだったようです。テレビCMでは結婚式場のコマーシャルがじゃんじゃん流れていたそうです。
新郎新婦がレーザービームやスモークの中から、ゴンドラに乗って天井から登場、ど派手なミラーボールが装飾として使われる、お色直しを2〜3回もする、ウェディングケーキは何メートルもある、などなど、とにかく面白いくらい時代を象徴していました。
バブル崩壊後 地味婚
そしてあっけなくバブルがはじけ、日本は長期にわたる不景気時代へと突入します。
バブル崩壊後主流となったのは、「地味婚」。
多くの会社が不良債権を抱え、それによって大手銀行が破綻してしまったり、貸し渋りによりたくさんの会社が倒産してしまったりと、日本は景気後退のバッドループにどんどんハマっていきます。
経済的に余裕がなくなると、真っ先にカットするのが冠婚葬祭のコストです。
「地味婚」は、不要なお金はとことんカットするというものでした。
海外でハネムーンを兼ねて二人だけで挙式をしたり、披露宴と新婚旅行を省いたり、小さなレストランを貸し切ってこじんまり結婚式をしたりと、バブル時代とは一転して、地味なウェディングが主流になっていったのです。
中には、婚姻届を役所に提出するだけ、という「ナシ婚」と呼ばれるものもありました。
2000年代〜 アットホーム婚
その後、2000年代に入ると、「アットホーム婚」というスタイルが流行りだします。
アットホーム婚とは、ゲストハウスなどの一軒家を貸し切ってゲストを招待して行うものです。
同じ空間で挙式とパーティを行うため、新郎新婦とゲストとの距離が近く、儀式がプライベートの色合いを増しました。
庭があるゲストハウスならば、一階の窓を開けきって、ガーデンビュッフェという形のパーティにしたり、プールがあるゲストハウスではプールのまわりでバルーンリリースを行ったりなど、一軒家ならではの、演出やパーティの自由度が高くなりました。
一度バブル崩壊後に結婚式の形態が根本から見直されてから、形式ばった結婚式への反抗と疲れのようなものが、「アットホーム婚」を生み出したのではないでしょうか。
2010年〜 和婚
日本の伝統的な色合いを取り入れた、「和婚」が流行りだします。
古民家をリフォームした落ち着きと趣のある会場や、披露宴でのお色直しを着物にするなど、ウェディングに「和」のテイストを取り入れたスタイルに人気が出てきます。
これは、女性の晩婚化が進んだことで、落ち着いた和のものを好む傾向が表れたのではないかと思われます。
また、欧米式の結婚式への一時的な小休止を意味しているのかもしれません。
2011年〜 アットハート婚
2011年の東日本大震災の年の一文字は「絆」でした。このころから「アットハート婚」というものが主流になりだしました。
あの震災により、日本中の人々が人とのつながりを見直しました。また、晩婚化が進む中で、2011年は結婚率が増加した年でもあります。
「アットハート婚」は、ゲストから祝福を受ける、ゲストに結婚をお披露目をする、というこれまでの結婚式の定義を変え、新郎新婦が「自分たちの大切な友人や家族に、改めてこれまでの感謝の気持ちを伝える」ことに主眼が置かれるようになったのです。
そのため、アットハート婚ならではの演出が式に組み込まれています。
● バージンロードで新婦の父親から新婦の手を新郎に託す時に、それぞれが一言ずつ言葉を贈り合う(父親は娘を託す思いを・新郎は新婦を守っていく決意などを)
● 結婚式でのゲストからの拍手は「結婚の承認・祝福」ということを司式者から伝える
● 披露宴会場の席札(ゲストの名前のカード)に手書きのメッセージを書く
● ケーキセレモニーへ親も参加(一緒にケーキカット・母親からのファーストバイト、ラストバイトなど)
● 中座時のエスコートを家族やゲストにお願いする(例えば、車イスの祖母と一緒に、など)
● テーブルラウンド時は会話を重視した写真撮影
● 親への感謝の手紙は新婦だけではなく、新郎も行ってOK
● 花束や記念品贈呈の際に手紙も一緒に贈る
● 親へのプレゼントをメッセージとともに贈る(例えば、お酒が好きな父親にお酒とともに「これからは一緒に呑みましょう」、遠く離れてしまう母親にアクセサリーを贈り「このネックレスはお守り。遠く離れても私がお母さんを守っているからね」などのコメントを司会者に紹介してもらう)
● エンドロール映像の中で、それぞれのゲストに贈る感謝のメッセージを入れる
などです。
2011年の震災で、私たちは一瞬にして多くの同胞をなくしました。
私たちはあの震災で物質的な充足感よりも、もっと大切ななにかに否応なく気付かされました。
人との絆を大切にする、真心を与え合う、ということが今の挙式の主流であることも、震災以降の日本人の精神的な気付きを顕しています。
2012年〜 シェアド婚(共有婚)
2012年ごろからトレンドになりつつあるのが、「シェアド婚(共有婚)」と呼ばれるものです。
ざっくり言ってしまうと「ウェディングというイベントをみんなとシェアする」というものです。
みんなに感謝の気持ちを伝える、真心を大切にした式、という基本的なコンセプトはアットハート婚と同じですが、さらにゲストと主賓である新郎新婦の境がなくなり、みんなで一緒に幸せを共有していこう、というコンセプトなのが「シェアド婚」です。
「新郎新婦とゲスト」という図式ではなく、みんなが輪になってセレモニーに参加する、というイメージです。
ゲストが参加するのは余興のみ、というひと昔前のスタイルとは違い、式の準備からゲストと一緒に盛り上げていったり、ゲームや余興も新郎新婦を含めた全員参加型で、感動をその場にいるみんなで共有するのです。
ここ最近のトレンドとなりつつある「シェアド婚」ですが、やはりこれも現代の社会を象徴するもの。
現在私たちはfacebookやツイッター、インスタグラム、LINEなど、SNS上でコミュニケーションを多くとっています。
ツイッターなどでも、人々から多く共有された投稿などがあっという間に日本中に広まり話題を呼ぶこともあります。
SNSの浸透により、日本のビジネス構造も変化してきました。
堅実なマーケティング、大金をかけた広告、老舗的な大手の信頼などの、これまでビジネスモデルの正解とされてきた方程式も、急速に変容してきています。
今はビジネスにおいても「いかに共感されるか」というのがひとつの指標になっているのです。
「シェアする」、「共有する」ことが私たちの行動様式に組み込まれてきている今、「シェアド婚(共有婚)」もまた、社会の流れをよく表していると言えます。
シェアド婚の様々な演出例
シェアド婚は、ゲストと一緒に結婚式を作り上げることが特徴です。結婚式の前準備から一緒におこなったり、プロフィールムービーを一緒に作ったり、とにかく一緒に式を作り上げるという意識が強いです。
そこで、シェアド婚ならではの演出が多数ありますので、ここで紹介したいと思います。
1. リングリレー
リングリレーという言葉を聞いたことはありますか?名前から想像する通り、リングをリレーして行く演出です。神前式の時には見られない演出でしたが、ここ数年人前式が増えたことでトレンドになっている演出方法の一つです。
式場の後方から前方に一本の糸を貼り、リングを通して新郎新婦に届けます。糸を赤い糸にすることで、ロマンチックさがましますよね。この演出は、ゲスト全員が楽しめ、なおかつ一体感がでるので、シェアド婚にはぴったりの演出方法です。
もし式で何かやりたいということであれば、まずはリングリレーを検討してみてはいかがでしょうか。
2. ブーケセレモニー
ブーケセレモニーは、新郎新婦もゲストも感動できる演出です。新郎新婦が入場する前に、12本のバラをゲストに配ります。1本1本には意味があり、感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠を表しています。
新郎は、入場する際に全てのバラを集めます。新婦が目の前に来た時に、この12本のバラを差し出し、愛を誓います。そして、新婦は、返事として一本のバラを抜き、新郎の胸ポケットに差し込みます。
これでブーケセレモニーは完了です。新郎とゲストが触れ合う機会があり、ゲストも感情移入してしまうこと間違いありません。実際に私の友人もブーケセレモニーをおこないましたが、ゲスト全員が感動していました。
かなり定番の演出ですが、シェアド婚であれば取り入れておきたい演出です。
3. 誓いの言葉
神前式で、誓いの言葉を読みあげるのは定番ですよね。結婚式に参加したことがない人でさえ、テレビのCMやドラマなどで何回も見たことがあるはずです。
しかし、これは神前式のみの演出です。人前式、とりわけシェアド婚になると、誓いの言葉を読み上げる役をゲストや親友に依頼することがあります。読み上げる文章は、新郎新婦が考えていますが、お互いの友人が誓いの言葉を読み上げるため、言葉の重みをより一層強く感じます。
私の友人も誓いの言葉を友人に読み上げてもらっていましたが、ゲストも参加できるためより身近な式に感じることができました。中には自分たちで誓いの言葉を読み上げることもあるようですが、友人に参加してもらったほうが思い出に残る式になるでしょう。
4. ウェディングツリー
近年徐々に増えてきている結婚式の演出の一つです。木のイラストを用意しておき、ゲストに葉っぱの印鑑を押してもらったり、葉っぱの付箋を貼ってもらったりすることで、一本の木ができるようになっています。
完成したイラストは、ウェルカムボードに使ったり、持ち帰って家に飾ったりします。誰が当日参加したのか覚えておくのにも役に立ちます。
このように様々な汎用性があるウェディングツリーですが、オリジナル性を出すために、スタンプのバリエーションを増やすこともできれば、メッセージを書いてもらうこともできます。最終的にどのように使いたいのかということを意識すると、何を書いてもらいたいのかはっきりとしますよ。
ウェディングツリーは、海外では一般的ですが、日本ではやっと普及してきたところです。どんな演出をするかは自分次第ですが、ウェディングツリーは新郎新婦の手元に一生に残るのでやっておいて損はないでしょう。
5. 披露宴のエンドロールに名前を出す
よくある演出の一つに、エンドロールの最後に名前を出すことができます。エンドロールとは、結婚式から披露宴までの映像をその場でプロが編集し、式の最後に流す映像のことです。
誓いのキスのシーンや指輪を交換するシーン、ゲストが出し物をしている場面やはしゃいでるシーンを数分のショートムービーにまとめてくれます。映像の最後には、参加してくれたゲストの名前を出して、足を運んでくれたことへの感謝を示すことができます。
ゲストとしても、エンドロールに自分の名前が載るのは気持ちがいいものです。エンドロールに何を出すか、しっかりと考えた上で演出に使ってみてください。
全員参加の披露宴
今までの結婚式であれば、全員参加のイベントは限られていました。やったとしてもビンゴ大会くらいではないでしょうか。
でも、これからの時代はできるだけ多くのゲストが参加して一緒に楽しむ式がトレンドになります。例えば、乾杯の音頭を高校、大学、会社などで3分割することもできます。また、披露宴の余興もゲスト全員が加われるものにしてもいいかもしれません。
デメリットもある
シェアド婚にいいイメージを持っているかもしれませんが、デメリットもあるということを知っておきましょう。シェアド婚は、仲のいい友人と集まり、一緒に楽しむことができる反面、企画や準備に相当労力がかかります。
打ち合わせをしたり、必要なものを作ったり、仕事をしながら全員が集まるというのはなかなか難しいように思えます。実際、私の友人も企画をしていましたが、一人ひとり仕事の休みが異なり大変だったと言っていました。
また、中にはみんなでワイワイするのが苦手な人もいます。特に年配の人は、慣れない式にびっくりすることがあるかもしれません。あとで、式に対して文句を言われる可能性もあるため、事前にどういった式をやるのかシェアしておくのも一つの手です。
シェアド婚は何より周りのサポートと協力が欠かせない結婚式です。このようなデメリットもありますが、一緒に作り上げた苦労や楽しさは一生忘れることはないでしょう。
いかがでしたか?
今回は、結婚式のトレンドは時代の流れを象徴している、というお話をしてきました。
こうやって俯瞰して見ると、時代時代に流行る結婚式なんかに惑わされない!という気持ちにもなってきますが、そのときのトレンドにひとつ乗っかってみるのも面白いのではないでしょうか。
将来振り返って結婚式の思い出話なんかをするときも「私の時代はね〜」と、時代背景も含めて懐かしむことができると思います。