お母さまとの特別な時間、ベールダウンセレモニーとは?
「ベールダウン」、「ベールアップ」という言葉をご存知ですか?どちらもそのまま、「ベールを下ろすこと」と「ベールを上げること」ですが、結婚式におけるベールには特別な意味があります。
ここでは、特にお母さまと花嫁にとって意義深い「ベールダウン」に焦点を置いてお話を進めていきたいと思います。
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目次
お母さまの最後のお仕事、ベールダウン
ベールダウンとは、他家に嫁がれる娘さんにお母さまができる最後の手助けです。結婚式前にブライズルームやバージンロードの入り口で、花嫁のベールをそっと下ろします。
一般的な教会式では、まず新郎が一人で入場し新婦の前まで歩きます。そして新婦が父親と共に新郎のもとに歩きます。父親は娘である新婦を新郎のもとへ導き、この動作で娘が父親の手を離れて、新しい家庭へ嫁ぐことを表しています。
これは教会式の見どころの一つで、新婦や父親に感情移入して涙ぐむゲストが多いシーンです。
ですが、実はその前にあるもの、それが母親と新婦の関係性を表すベールダウンです。
時間にしてはほんの数秒ですが、この間にお母さまは娘さんが生まれた時から今までの、子育てや思い出を振り返ります。
ベールダウンはいよいよご自分の手を離れて新郎の元へ向かわれる娘さんの、最後の花嫁仕度を手伝うお仕事。お母さまの感慨もひとしおです。
もちろん、最近では遠い場所に嫁いでいても実家に帰る手段も多く、連絡も気軽に取れるようになってきましたので、昔ほど「他家へ嫁いでいってしまう」という印象は強くないかもしれません。
ですが、母が子育ての仕上げをするこのシーンは、現代でも色褪せないのです。
ベールダウンのタイミングは2通り
ベールダウンセレモニーは、先に述べたようにお母さまにブライズルームに赴いて行っていただくものと、バージンロードの入り口や、会場の扉の前で行うものとがあります。
この二つのタイミングについて具体的に見ていきましょう。
ゲストも感動するバージンロードでのベールダウン
バージンロードの入り口で行う場合には、ベールダウンを結婚式の演出のひとつとして行い、ゲストの方にも見ていただけるという利点があります。
ゲストの中でもこのシーンを楽しみにしている方も多いので、おすすめの演出です。このタイミングでのメリット・デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
<メリット>
- 母娘2人でのベールダウンは照れくさい
- 演出が増えてゲストにも喜んでもらえる
- 父親のバージンロードと併せて、「親の最後の務め」を表現できる
- 挙式で母娘のツーショットを撮ってもらえる
<デメリット>
- あっという間に終わってしまって感傷に浸れない
- 母親がその後席まで着くのに手間取る
- 挙式のスタート時に行うので、新婦は泣くのを我慢しなければいけない
以上のように、メリットやデメリットが挙げられます。教会式の一部に取り込むと皆に見てもらえますが、あっという間に終わってしまいます。照れくさいけれどベールダウンを行いたいという方にはおすすめですが、ゆっくりと母娘で話したい場合は少し都合が悪いかもしれません。
また、お母さまは挙式では通常、最前列に座ります。そのため、ベールダウンを行うとすぐに最前列まで向かわなければいけません。その際にお父様と新婦の歩みを見逃してしまうことが考えられます。
じっくりと向き合うならブライズルームで
一方、ブライズルームで行う場合は、どういうメリット・デメリットがあるのでしょう。
<メリット>
- 母娘でじっくり話せるため二人の思い出に残る
- 母親と話すことで挙式への緊張がほぐれる
- 泣いてしまっても挙式前にメイク直しができる
<デメリット>
- ゲストの皆さんに見せることができない
- 思い出に浸りすぎて泣きすぎてしまう
- 挙式でのツーショットが撮れない
と、ブライズルームでのベールダウンは、嫁ぐ前にお母様とじっくり話して感謝の気持ちを述べたいという新婦にはおすすめのタイミングです。
じっくり話し合えば感極まって泣いてしまうこともあるでしょう。もしそうなったとしても、挙式までにメイク直しをすることができますので、涙を我慢しすぎずに済みます。とは言っても、挙式直前に行うベールダウンですので、泣きすぎには注意です。
どちらのタイミングでも、母娘にとって思い出に残る瞬間となるはずですが、お母さまにもどちらが良いか相談して決めましょう。
お母さまにとっても、娘にしてあげる最後のお仕事です。あなたとたくさん言葉を交わしたいと思っていらっしゃるかもしれませんし、涙が止まらなくなりそうなので演出の一部に組み込みたいと思っていらっしゃるもしれません。
ベールダウンは花嫁を守る魔除けの儀式
もともとベールには魔除けの意味があります。ベールは古代ギリシャやローマ時代から存在し、ベールダウンの儀式はキリスト教のプロテスタントの慣習が広まり一般化したとされています。
古来より西洋には、悪魔によって純潔の女性がさらわれるという言い伝えがあります。
結婚式は悪魔にとっては絶好のチャンスです。そのため、教会に向かう前に花嫁にベールを被せ、悪魔に見つからないようにしたと言われています。
お母さまが花嫁のベールを下ろすのは、花嫁をお守りくださいという意味が込められています。
ベールは障壁の意味合いも
ベールは魔除けであると同時に、新郎と新婦の間の障壁でもあります。
花嫁がバージンロードを歩いたあとに新郎がベールを上げてキスをする「ベールアップ」は、2人の間の障壁を取り払うとともに、これからは新郎が花嫁を守るという決意のあらわれでもあるのです。
新郎の手によりベールが上げられることで、これからは2人何も隠すことなく幸せな家庭を築いていくという意志をゲストに見ていただくセレモニーがベールアップです。
和装の場合の、ベールダウンに替わる儀式
和装での挙式の場合には、ベールダウンと同じような意味合いのセレモニーに「末広の儀」や「紅置きの儀」、「懐剣の儀」があります。
末広の儀は、お母さまが花嫁の帯に扇子を差し、花嫁の最後の身支度を整えるもの。紅置きの儀は、花嫁の紅の最後のひと筆をお母さまが仕上げるものです。
これらもベールダウンと同様にお母さまが娘さんにしてあげられる最後のお仕事で、その瞬間は感慨深いものです。
どちらも、タイミングとしては入場してすぐに行うものです。末広の儀は帯に扇子を差せばよいのですが、紅置きの儀は実際に紅を塗るのでテクニックが必要となります。そのため、実際には紅を付けず紅筆をそっと花嫁の口元にあてがうだけとされています。
魔除けの意味を持つ「懐剣の儀」
こうした儀式の中でも、ベールダウンと最も意味合いが近いのは懐剣の儀でしょう。
嫁いで行かれる娘さんの行く末の幸せを祈り、門出の際にお母さまが新婦の胸元に懐剣を差すものです。
剣はベールと同様、多くの儀式で魔除けのお守りとして用いられてきた神聖なもの。婚礼においては、新な人生を歩み出す花嫁をさまざまな災いから守り、また夫婦円満や無病息災を祈るものとされています。
この懐剣の儀はもともと武家の婚礼の際に行われていたもので、武家の娘の嫁ぐ際の心がけで、いざという時に自分の身を守れるように、といった意味合いがあったようです。
これが一般化したのは、江戸時代が終わったあと。庶民の武家へのあこがれから行われるようになったのではないかと言われています。
まとめ
結婚式で行われるひとつひとつのセレモニー。その一瞬一瞬に大切な意味が込められています。
ベールダウンは独身時代を締めくくる、お母さまとの最後の触れ合いです。
このセレモニーを行う人と行わない人は半々であると言いますが、お母さまが了承してくださる場合には是非取り入れて、母娘の大切な瞬間を過ごしてくださいね。