新しい夫婦のカタチ「事実婚」、知っておきたい手続きを紹介
ふたりで婚姻届けに判を押して、それを役所に提出することで晴れて夫婦になる……それが結婚です。正式に結婚をすることで社会的にも認められ、さまざまな恩恵を受けることができます。
しかし法律婚にこだわらず、あえて事実婚を選ぶカップルが増えてきているのをご存じでしょうか。日本ではまだまだ少数派の事実婚ですが、海外では珍しくありません。例えば、フランスでは事実婚(PACS)と法律婚の割合は、3:2なのだそう。
そこで今回は、籍を入れない「事実婚」をクローズアップ。新しい夫婦のカタチである「事実婚」と、事実婚をするうえで知っておきたい手続きについて詳しくご紹介します。「事実婚をしたい」「興味がある」という方必見です。
目次
事実婚って?結婚との違いや手続きについて
事実婚とは、婚姻関係を結ばずにふたりが共同生活を営むことを言います。結婚は籍さえ入れれば同居でも別居でも構いませんが、事実婚はふたりが一緒に暮らすのが大前提。ただし、単身赴任などのやむを得ない事情がある場合は例外もあるようです。
「事実婚=同棲」と思われがちですが、実は同棲とも少し違います。下記のふたつを満たした関係を「事実婚」と言います。
- ふたりに婚姻の意思がある
- 共同生活をしている
一緒に暮らすだけの同棲との大きな違いのひとつに、「事実婚である」というのを証明するための手続きがいくつかあることが挙げられます。ここでは、事実婚とはどのようなものか、またその手続きなどもあわせて具体的にご紹介します。
【事実婚でしておきたい手続き1】住民票の世帯合併の手続きをする
事実婚をするうえで、必要な手続きは特にありません。ただし社会的なサービスなどを受けるためにしておいた方がいい手続きはいくつかあります。
まずは住民票に続柄を記載する手続きです。居住する地域の役所で世帯変更届となる「世帯合併届」を提出し、同居するふたりの世帯合併をします。これは事実婚を証明するうえで必要な手続きですので、忘れないようにしましょう。
入籍した場合、住民票には続き柄の欄に、世帯主と配偶者がそれぞれ記載されます。いっぽう事実婚の場合は、世帯合併の手続きをおこなうことで、住民票に以下のような記載がされます。
- 夫が世帯主……妻は「妻(未届)」
- 妻が世帯主……夫は「夫(未届)」
- ※自治体によって異なり、「同居人」と記されるケースもあります
世帯合併の手続きをすることで、「入籍はしていないけれど、事実婚の関係である」ということが証明されます。勤務先によっては家族手当を受けられるケースも。
社会的に事実婚を証明したい場合は、居住地の役所で世帯合併の手続きをおこなうようにしましょう。
【事実婚でしておきたい手続き2】公正証書の作成
住民票の世帯合併をするほかにしておきたい手続きは、「公正証書」の作成です。公正証書とは、公証人が契約の成立や一定の事実などを、法律に基づいて作成した書類のことを言います。
「ふたりが事実婚である」という契約書を作成することで、入院時や保険の受取といったさまざまな事柄にスムーズに対応できます。
公正証明書の作成は、行政書士にお願いしましょう。インターネットで調べると、さまざまな事務所が出てくるので、近くの事務所や自分達にあいそうなところを探すことをおすすめします。公正書作成にかかる費用は、行政書士事務所によって多少の違いはありますが、3万円から10万円以内で収まることが多いようです。
公正証明書を作成しなくても事実婚は可能ですが、今後長く一緒に暮らすことを考えた場合、また万が一のときにも役に立つはずなので、必ず作成しましょう。
事実婚の公正書作成のメリットは、主に下記のようなケースです。
【パートナーが病気や事故にあった場合】
パートナーが病気や事故で入院し、症状が重い場合、面会や付き添いができるのはごく近しい親族に限られるケースが大半です。公正証明書にて事実婚であることが証明できれば、家族として付き添うことが可能です。場合によっては、治療方法を決めることもできるでしょう。
【相続がスムーズ】
事実婚状態でもしパートナーが亡くなってしまった場合、長い間一緒に暮らしていたとしても財産を相続できません。しかし、公正証書に相続に関して記しておけば、財産を相続できない事態を避けられるでしょう。
不動産や動産の相続権利がパートナーにもあることを遺言に残しておくことが大切です。なるべく具体的に決めておくと、トラブルを回避できます。
【住宅ローンが組める場合も】
近年、公正証書で確認できれば、事実婚や同性カップルでも配偶者の定義として扱い、住宅ローンを組める銀行が増えてきています。すべての銀行でそのようなプランを打ち出しているわけではないので、まずは問い合わせてみましょう。
これからも増えそうな事実婚!制度を常にチェックしましょう
事実婚をするうえで知っておいた方がいい手続きについてご紹介しました。事実婚を選択するカップルが増加傾向にあるので、今後も制度が更新される可能性があります。事実婚に関する制度を、定期的にチェックすることをおすすめします。
また「パートナーシップ制度」という、同性カップルが婚姻関係のある夫婦と同じようなサービスを受けられる制度を導入する自治体も増えてきています。カップルのカタチが多様化していることが分かりますね。
法律婚というカタチをとりたくなくても、公的にカップルだと認められることで受けられるサービスはいくつかあります。事実婚を考えているカップルは、この記事を参考に、必要な手続きをおこなってくださいね。